「ニシン漬け」は、身欠きニシンと米こうじ、大根、キャベツニンジンなどを使用して作る、北海道の冬を代表する漬物です。
昭和の頃までは、秋になると各家庭で大根などを干し、冬になる前に大きな樽に漬物を漬ける風景が身近に見られましたが、最近では、生活スタイルや食習慣の変化、家族構成の変化に伴い、家庭で大量の漬物を漬ける事は少なくなりました。
実際、大量に漬けても、少人数の家族では食べきるのが難しいと思います。
そこで今回は、少ない量から好きな分量で作れて失敗しない「ニシン漬け」の作り方を紹介します。
ニシン漬けについて
「ニシン漬け」は、北海道のニシン漁が盛んだった時代にルーツを持つ、北海道の郷土料理です。
ニシンは春にやって来るので、「春告魚(はるつげうお)」とも呼ばれます。北海道のニシン漁が盛んだった明治時代には、春にとれたニシンを干して保存し、晩秋に野菜や麹と一緒に漬けた「ニシン漬け」は、当時の厳しい雪国の冬を乗り越えるための重要な保存食でした。
現在は昔と違い、冬でも新鮮な野菜や食材が常に手に入るようになったので、「ニシン漬け」の冬期間の保存食としての意味合いは少なくなってしまいましたが、北海道の冬の味覚として変わらずに親しまれています。
「身欠きニシン」の名前の由来については、2つの説があるようで、干してから戻したニシンの干物の身が筋ごとに取れやすくなる(欠けやすくなる)為、というものと、ニシンの加工の工程で、腹側の身を欠くことを「欠き割り」と言い、腹部の身を欠き、乾燥させたことから「身欠き」となったと言われています。
失敗しない「ニシン漬け」の分量と塩分濃度のポイント
【ポイント】
1.「ニシン漬け」を作る工程は2日かかるので、材料と作り方は1日目と2日目にわけて記載しています。
2.野菜の量は、好きな分量で作れます。ここでは例として野菜の総量1㎏に対しての分量を記載しています。野菜の増減を行う時は、塩分の濃度と、こうじを加える割合いを変えて下さい。例えば、野菜の総量500gで作りたければ、ここで記載されている材料の分量をすべて半分にすれば作れます。
3.こうじの量はお好みで加減しても問題ありませんが、最低でも、野菜の総量の4%以上は入れた方がうまくいきます。私の個人的なおすすめの分量は、野菜1㎏に対してこうじ60~100gです。(こうじの袋に適量が書いてある場合はそちらにあわせても良いです)こうじは野菜の水が出た後に加えるので、乾燥こうじを使う場合でも事前に水で戻さなくて大丈夫です。
4.ここでは塩分3%になるように分量を記載しています。塩分3%で作る場合、 野菜の総量合計1㎏に対し塩30gになります。
3%の塩分量の計算式は (野菜全体の重さ)g× 0.03です。
例えば野菜1㎏の場合は、1000g×0.03=30 となり、1㎏の野菜に対して加える塩は30gとなります。
ニシン漬けはもともとは保存食であったり、漬け込んでから味がなじむまで数日かかるため、塩分は薄くしすぎない方が傷みにくく失敗しません。大体塩分3%程度にするのが適度な濃度ですが、塩分を控えたい方は2.8%程(野菜1㎏なら塩28g)にして、塩を少し減らしても大丈夫です。逆に、日持ちさせたい場合はもう少し塩を多くします。
仕込み1日目:野菜の塩漬け作成と身欠きニシンを米のとぎ汁に漬ける
仕込み1日目に使う材料と、作業の工程です。
仕込み1日目に使う材料 (記載した分量は野菜1㎏の例です)
・キャベツ、大根、人参などの野菜: 各野菜好きな割合で合計した量 1㎏
・身欠きニシン: 約3本~好きなだけ
大体1㎏の野菜に対して、3本~4本、戻した後のグラムだと120gほど入れるとバランスがよいです。ニシン好きな方はたくさん入れて下さい。
・塩: 野菜の3%の量 今回は30g使用
・米のとぎ汁: ニシンが浸かる量(ない場合片栗粉で代用可。片栗粉使用の分量は記事の一番下に記載しました)
・ジップロックなどの丈夫な食品用保存袋: 密封出来るもの。材料が入った状態で混ぜる余裕がある大きさのもの。
仕込み1日目に行う作業
①漬けたい野菜を好きなだけ洗って、食べやすい大きさに切っておきます。
②野菜の重さを計りながら、保存袋に入れていきます
③野菜の重さに対して3%になる量の塩を加え、全体をよく混ぜて袋の空気を抜きます。下の写真は、1㎏の野菜と、30gの塩です。
④保存袋を密封し冷蔵庫に入れ保存します。野菜から水分が出てくるので、時々袋を揉んで水分を全体になじませて下さい。
⑤身欠きニシンを米のとぎ汁に浸け、冷蔵庫か涼しい所で1日置きます。全体が米のとぎ汁浸かるようにする為、長い身欠きニシンは半分に切っても良いです。
仕込み2日目:すべての材料を合わせて漬ける
野菜を塩で漬けた翌日には、野菜から水分が出て袋がひとまわり小さくなり、米のとぎ汁に浸したニシンは柔らかくなっていますので、材料をすべて合わせて漬け込む工程に進みます。
仕込み2日目に使う材料 (記載した分量は野菜1㎏の例です)
・こうじ: 野菜の総量合計1㎏に対し60g~100g
・生姜: 約2㎝~好きなだけ(量はお好みですが、野菜1㎏につき40gくらいが適量かと思います)
・鷹の爪: 1/2本~好きなだけ
仕込み2日目に行う作業
①ニシンを水で洗って米ぬかを落とし、うろこを取って食べやすい大きさに切ります。さらに腹骨、背びれをハサミなどで取り除くと、食べやすくなります。
②鷹の爪、生姜も切っておきます。
③こうじを必要量計ります
④前日に塩漬けにした野菜の袋の中に、こうじ、ニシン、生姜、鷹の爪を入れます。
⑤全体を混ぜ合わせ、袋の空気を抜いて密封し冷蔵庫で保管します。
⑥翌日には、さらに野菜の水分が出てくると思うので、時々揉んでこうじとなじませます。漬けてから5日ほど経って、こうじの粒が柔らかく溶けたようになって来た時が食べごろの目安です。
作りたての時は、塩辛さに尖りがあるように感じますが、こうじがなじんでくるとだんだんとマイルドな塩味に変化します。冷蔵庫で保管して2~3週間以内に食べきるようにします。
漬けてから時間が経ってくると、酸味が出て酸っぱくなります。酸っぱくなっても食べられますが、酸味が出たら、傷むのが近いサインです。
3週間以内であっても、においが酸の強いつんとしたものに変わる、ニシン漬けに触るとねばねばする、糸を引く、などがあれば食べない方が安全です。
少ない量でも作れる、失敗しない「ニシン漬け」の作り方まとめ
ニシン漬けを作る為に、特に難しい作業はありませんが、1日にすべての工程が終わらないので面倒に感じるかも知れませんが、一度作ってしまえば、冷蔵庫で保存して完成後2~3週間は日持ちします。
再度、ニシン漬けの作り方の手順を簡単にまとめます。
①野菜を洗って切る
②保存袋に野菜を計量しながら入れ、野菜の量の3%の塩を加える
③身欠きニシンを米のとぎ汁に一晩浸漬する
④翌日、洗って切った身欠きニシン、生姜、鷹の爪、こうじを野菜に混ぜる
⑤こうじが溶けてくる頃(3~5日後)まで時々混ぜながらまつ
【失敗しないポイント】
・野菜に対して塩の分量を3%前後にする
浅漬けなどとは違って、ニシン漬けは出来上がるまでに5日以上の日程が必要です。その為、あまり塩分が少なすぎると雑菌が繁殖しやすくなり、傷んでしまうので、塩分2.8%~3%が適量です。3%の塩分は(野菜全体のグラム)×(0.03)で計算できます。具体的な分量は、野菜総量500gの場合→塩15g、野菜総量1㎏の場合 →塩30gを例として、必要な分量で調整して下さい。
・ニシンの処理(米のとぎ汁がない時)
ニシンは魚なので、当然ですが生臭みがあります。身欠きニシンを戻すときに米のとぎ汁を使うのは、米のとぎ汁に含まれるでんぷん質が生臭みや余分な油分を吸着してくれるからです。最近では、無洗米などを使用する家庭もあり、米のとぎ汁がない時もあると思いますが、その場合は片栗粉もでんぷん質を含んでいるので代用として使えます。片栗粉は、身欠きニシンを浸す水に、小さじ1~2杯を良く溶かして使用して下さい。
腹骨の部分を取り除く事でも、生臭みの軽減になります。