「イクラ」を漬ける時期
「イクラ」は、サケやマスの卵を一粒ずつ分離し塩漬けや醤油漬けにした食品です。卵を一粒ずつ分離せずに漬けたものは「筋子」になります。イクラの語源はロシア語で、魚卵、小さい粒を意味する「Икра(ikra)イクラ」に由来しています。
北海道の鮭の漁獲量は全国1位で、全体の80%ほども占めています。他には、青森県、岩手県、宮城県なども鮭の水揚げがあります。
イクラは9月から10月にかけて抱卵する「秋鮭」の卵の事で、同じ鮭の卵でも、夏に水揚げされる「時鮭」は成長段階が若い為、卵の粒が小さすぎて「イクラ」に加工することが出来ません。
北海道では9月~10月の秋鮭の水揚げ時期が「イクラ」の旬と言えます。北海道以外の地域では、少しづつ旬の時期が異なります。青森県、岩手県は北海道とほぼ同じ時期ですが、少し南寄りの宮城県については10月~12月とやや遅めになっています。
北海道で水揚げされる秋鮭の卵は、粒が大きく「イクラ」にするのには最適ですが、注意点としては、秋鮭漁の漁期が終わりに近づく11月頃になると硬くなってしまう事です。漁期前半の9月~10月頃は、卵が栄養を取り入れる為に皮が柔らかい状態ですが、産卵が近くなると卵の皮質が産卵時に壊れないよう硬くなる為です。そうした硬い「イクラ」は、ピンポン玉に例えて「ピンポンイクラ」と呼ばれ、イクラ漬けを作っても、粒が硬くて噛めないほどになります。私も、以前人からもらったイクラの醤油漬けがピンポンイクラで、噛んでも噛んでも噛めず、口から飛び出してしまうくらい硬かった事がありました。
イクラの醤油漬けを作る際、失敗しない最大のコツは、旬の時期である9月~10月に作る事でしょう。ただ、秋にイクラを漬けて冷凍して保存し、お正月に食べる方もいると思うので、その場合は少し皮が硬めの方が粒が割れなくて良いと市場の魚屋さんで教えられました。用途にあわせて時期を選択すると良いと思います。
ほぐしアミを使わずにイクラの醤油漬けを作るやり方
【材料】
・イクラ 300g前後
・醤油 大匙3
・酒 大匙3
・みりん 大匙2
【その他】
・イクラを洗うボールなどの容器
・ざる(イクラの水切り用)
・40~45度のお湯約600ml(ほぐす前のイクラが浸かる量)と塩小さじ1
・イクラを漬ける容器(瓶、ジップロック、タッパーなど)
1.漬け汁を作る
冷ます時間が必要なので、先に醤油漬け用の漬け汁を準備します。
醤油:大匙3、酒:大匙3、みりん大匙2を鍋に入れ、一度沸騰させてから火を止め、常温くらいまで冷ましておきます。記載の分量はイクラ300g前後の量なので、イクラの量で加減して下さい。
2.イクラの下処理
漬け汁を冷ましている間に、イクラをほぐします。イクラは、40~42℃のお湯につけると、卵を包んでいる皮膜が縮んで、一粒ごとに外しやすくなります。お湯は、給湯器の温度設定を使用すると熱くなりすぎずに便利です。イクラやボールが冷たい場合は、お湯の温度が下がりやすいので、給湯器の温度を41~43℃に設定しておきます。
・ボールなどの容器にイクラを入れて、塩小さじ1と温度設定をした給湯器のお湯を入れます。
・お湯につけると、皮が縮むのでイクラの粒がもりあがっているように見えます。お湯の中でゆすって卵を振りほどくようにし、指の腹を使って潰さないように皮から卵を外していきます。
卵が大体外れたら、一度ざるに上げて、目立つ皮などを取り除きます。その後、再度ボールに戻して水をそそぎ、卵から残りの膜や皮を取り除きます。綺麗になるまで、数回水ですすぎながら皮や膜、血管などを取り除いていきます。
3.水切り
皮や膜などを取り除くと下の写真のようになりました。
卵が白っぽくなっていますが、あとで漬け汁に漬けると戻るので問題ありません。ざるに上げて10分ほど放置し、水を切ります。時間がない時は、上から酒を振ってざっと水切りして漬け込みます。
4.イクラを漬ける
水切りが済んだら、イクラをタッパーや保存袋などの保存容器に入れて、漬け汁が常温程度に冷めていることを確認して注ぎます。数日で食べきる場合は容器の消毒は不要ですが、長期に冷凍保存などする場合は、瓶などを使用して事前に熱湯で消毒するなどの保存用の雑菌を除去する工程を加えた方が良いです。
保存容器を密閉して冷蔵庫で1日漬ければ完成です。スプーンなどで取り出すときは、清潔なものを使用するなどして、容器内での雑菌の繁殖には注意して下さい。
そのまま食べてももちろん美味しいですが、イクラご飯もお勧めです。ワサビ醤油を少しかけるとつんとしたワサビの風味がアクセントになります。